ペットの歯周病対策、処置、予防

1. 歯周病?口腔内疾患が考えられる場合の行動(しぐさ)

→以下の項目に当てはまる動物さんは要注意です。

口腔内からの出血、鼻出血(鼻血)

よだれ(流涎)

頬や下顎の腫脹(はれている)か、膿を出している。

食事中に突然奇声をあげる。

口を開こうとしない。口の周囲を触られるのを嫌がる。

口臭がある。口が臭い。

歯や顎をガチガチ鳴らす。

軟らかいものしか食べない。

2. 歯垢とは

食べかす(残渣)と唾液中の糖タンパクが歯の表面にくっつき(ペリクル形成)そこに口の中のグラム陽性菌が定着し増えていったもの。

歯垢中の虫歯菌が厚くなり、歯垢となった結果、空気(外気)と遮断されるため、通常空気があるところでは増えない病原菌(グラム陰性桿菌)が増えていって歯肉炎を起こす。(バイオフィルムの形成)

ポケット内で菌が増殖する。歯肉炎が放置されると歯肉の退縮(アタッチメントロス)、歯槽骨の吸収、歯列異常、不正咬合などがおきる。

3. 予防歯科の処置

予防処置(歯石・歯垢除去):歯の表面?歯肉縁、歯肉縁下(歯周ポケット)の歯石を除去すること。スケーラー(超音波機器や用手法)がある。

1)ルートププルーニング:

歯周ポケット内の歯の根面の汚染セメント質をキュレットスケーラーを用いて除去すると、セメント質にできた凸凹を除去して、滑沢な根面を残すように行う。

2)キュレッタージ(歯肉炎の掻把):

キュレットスケーラーを用いて、歯周ポケット内の歯肉壁(炎症部位)を除去すること。歯肉を根面に密着させて再付着させるために行う。

3)ポリッシング(歯面研磨):

スケーリング後の歯面の傷(ザラザラ)をブラシやラバーカップ(ゴム)を用いて、できるだけ滑沢な面にすること。次回歯石が付きにくくする。

4)洗浄:歯周ポケットや口腔内に歯石が残らないように生理食塩水で洗う。

5)ホームケア:(これがけっこう大事なんだよなぁー)

歯ブラシやガーゼ、フィンガーブラシなどで歯垢除去(ハミガキ)をすることが最も効果的である。動物さんがハミガキを嫌がるなど協力的でない場合は口腔内洗浄液(アクアデント)やジェル(マキシガード)、歯石を取るフード(t/d)や歯肉炎の抗体を作るフード(ドクターズダイエットシリーズのプロピゲンPG)の使用を考える。

硬い生皮やヒズメ、骨、プラスチック、金属さらに一部のゴム、玩具(おもちゃ)、スナックは歯を破折させたり、摩耗させたりするので注意が必要である。

4. 歯の対象に関して

歯周ポケットが5mm以上ある、動揺(歯がグラグラ)ている時は抜歯の対象となる。

犬や猫は人間と異なり、歯の咬哈面が水平方向にかかるため、歯肉治療や補てん(つめもの)はとれてしまうことが多く。その都度全身麻酔になるため好ましくない。

歯は歯槽骨とくっついてる靭帯をエレベーターではがして脱臼させることで抜く。

臼歯のような多根歯の場合は単根に分割してからぬく。

抜歯窩(歯を抜いた後の穴)は、ラウンド鋭匙などで掻把、洗浄し必要に応じて抗生物質や骨補填材などで注入し、吸収性縫合糸(当院ではPDS?を使用)にて、抜歯窩を閉鎖する。残根、顎骨骨折、口鼻瘻管、ドライソケットなどにならないよ細心の注意をはらっています。

5. 交叉咬合(クロスバイト)

顎の長さと幅の不一致(骨格性不正咬合)、歯の位置異常(歯性不正咬合)あるいは両者により生じる。

1)前方(吻側)交叉咬合(オーバー)

いわゆる出っ歯。乳歯遺残や下顎の幅が狭い犬種に比較的多い。

2)後方(尾側)交叉咬合(アンダー)

コリー、アフガン、ボルゾイなど長頭種に遺伝性にみられる、いわゆる受け口。顔面への外傷が関与することがある。

6. 乳歯遺残

通常、永久歯が刑されると乳歯の歯根は吸収されて脱落する。乳歯が脱落せずに永久歯と共存して2週間以上たつと不正咬合が生じる。

7. 口内炎

猫では口内炎がひどくなって歯周病を引き起こすことがある。犬では免疫の異常(免疫介在性疾患)で潰瘍のような口内炎になることがある。

8. 猫の口内炎

口腔内細菌の日和見感染や猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスおよびカリシウイルス感染など複数の要因によって発症することがある。

猫の破歯細胞性吸収症候群(FORL,ネックリージョン)

もともと歯周組織に存在する破歯細胞によって歯質が崩壊され、かつ硬組織によって置換されること。感染がなければ歯質が消失し骨組織に置き換わり病態は終結する。(それ以上悪さはしない。)

感染があるときは疼痛、片側性に噛む、歯ぎしり?食欲低下、よだれ、口臭などを引き起こす。治療方法は歯冠切除?抜歯である。

9. 破歯細胞性吸収病巣の病態別分類:

ステージ1:歯頸部や根分岐部の発赤や腫脹がみられ、エナメル質やセメント部の浅い損傷がある。

ステージ2:プローブング時にエナメル質やセメント質をわずかに穿孔し象牙質に病巣が及んでいる。

ステージ3:プロービングジに歯髄からの出血がみられる

ステージ4:歯肉の隆起がさらに拡大する。レントゲン上では歯髄腔は不明瞭になる。歯髄膜と歯根が骨製癒着(アンキローシス)している。ステージ4で抜歯が困難な時は歯冠部のみ切除して歯肉を縫合することがある。

ステージ5:レントゲン上では、歯根が存在した部位が歯槽骨と同様な透過性となる。歯質が肉眼で認められない状態。歯冠部が確認されれば切除し、骨縁を平滑にして歯肉を縫合する。

10. 歯瘻(しろう):

歯が化膿して口腔粘膜と皮膚との間に交通路が生じたのもの。

内歯瘻:口腔内に排膿するもの。人や犬で多い。

外歯瘻:根尖膿瘍が原因で口腔外(頬などの皮膚や鼻腔)に排膿するもの。犬に多い。腐骨、抜歯後の不良肉芽、嚢胞における感染?埋没歯などにより生じることもある。歯を抜いても瘻管が落とし穴のようになってふさがらず、蓄膿のようになることがある。

11. ペットの痤瘡(アクネ):

ケラチンや皮脂腺の内容物が真皮内に放出される結果、毛包内に細菌感染が生じて炎症を引き起こし細菌性毛包炎となったもの。進行するとかゆみを生じる。尾に発生するものはスタッドテイルという。

毛包虫症(ニキビダニ)や皮膚糸状菌(マラセチア)が原因の時はそれらに応じた治療が必要。クロルヘキシジン(ヒビテン)、サルファ剤(ノルバサンシャンプー)、マラセブシャンプーなどで週2-3回洗浄する。

12. 咬耗:

加齢とともに生じる生理的咬耗と不正咬合を伴った歯列で噛むことで生じる病理的咬耗、石やおもちゃ、ケージなど硬いものをかむことにより生じる咬耗がある。

エナメル質や象牙質が摩滅する(すりへる)ことで露髄している時は歯冠修復や歯内療法が必要である。

13. 破折:

最も歯折しやすい歯は犬では犬歯、上顎弟4臼歯および切歯が、猫では上顎犬歯が多い。内部歯髄が見えている状態を露髄という。肉眼で露髄している時、時間経過が少なければ出血がみられるが、時間がたったものは黒く見える。

露髄すると歯髄縁や骨髄壊死、骨髄炎や敗血症になり命にかかわることもあるため破折れ後24時間経過していない時は抜髄や抜歯してしまったほうがよい。

14. 齲蝕(うしょく、虫歯)

歯垢中の細菌は炭水化物を発酵させ(有機)酸を産生する。

この(有機)酸が歯質を溶して局所的に崩壊(穴が開く)させる。この口腔内は犬猫ではPH8.0とアルカリ性で(人ではPH6.5)、唾液中にアミラーゼが含まれないため、口の中での発酵が起こりにくく、虫歯自体は人より少ない。猫ではさらに稀である。

虫歯になったら歯は抜けばいいというのものではありません。天然に勝る歯や処置は存在しません。どうしよう?と思った時は考え込むのではなく、まずはお気軽にご相談ください。